『藤田嗣治 「異邦人」の生涯』

藤田嗣治 異邦人の生涯

藤田嗣治 異邦人の生涯

☆☆☆☆★
読んだ。元NHKディレクターによる藤田嗣治伝。大きな典拠は藤田夫人のインタビューと藤田自身が書き込みをした夏堀全弘氏の「藤田嗣治論」の二点。誰がどうみても、『藤田嗣治作品を開く』よりも本当は、こちらを先に読むべきだった(反省)。個々の作品については『開く』のほうが実証的かつ写真も豊富だが、本書は、藤田の生涯とりわけ戦中の「戦争画」と戦後の「戦争責任」について、当時の資料をGHQ側のものも含めて検討し、当時の藤田と日本画壇をめぐる歴史的状況を明らかにしており、ここに本書の価値があると思われる。サブタイトルに「異邦人」とあるが、この言葉ほど藤田という人間を的確に表している言葉はないのではないか。藤田はその生涯を通じて、ここではない場所に想いをはせていた。パリにありて日本を想い、日本にありてパリを想う。あるいは戦後にありて、戦前のモンパルナスを想う。モディリアーニ、スーチンと生きたあの美しき日々を。なお、本日1月24日は、モディリアーニの命日である。

本書は、すでに文庫化している。

藤田嗣治「異邦人」の生涯 (講談社文庫)

藤田嗣治「異邦人」の生涯 (講談社文庫)