『希望の書店論』

希望の書店論

希望の書店論

☆☆☆★★
読んだ。おもしろかった。著者は日本で最大の書店ジュンク堂池袋本店の店長を務めた人で、その当時の経験談(書店観からコンピュータとの付き合い方まで)から、図書館ユーザーとしての経験から図書館に関する提言まで。本書は、版元のホームページ上に「本屋とコンピュータ」と題して連載されたコラムに、別媒体での文章や書下ろしを加えたもの。そもそも池袋に縁がないので、ジュンク堂にいくことは年に一回もないので、申し訳ないばかり。それでも本書を読むと書店員という仕事が、顧客と本という登場人物に光を当てる裏方仕事であり、そのための舞台をつくるために「愚直に」仕事をすることが書店員の仕事であると考える著者の熱意ある仕事ぶりがひしひしと伝わってくる。

『本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる仕事』

本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本

本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本

☆☆☆☆★
読んだ。おもしろかった。実は一度著者のトークイベントに参加したことがある。そのときに語られていた企画が、どのような経緯でもって、そしてその後どのような変遷をたどったかを知る。本書はいわゆる両A面の体裁になっていて、片側が「本の未来をつくる仕事」として、著者のブック・コーディネーターとしてのこれまでの仕事を紹介している。もう一方は「仕事の未来をつくる仕事」として、著者の仕事観がこれまでの経験に即して率直に述べられている。そこで語られていることは、これまで成し遂げてきた(クリエイティブな)仕事に比べてとても素朴にみえる。なんだ、かっこいい仕事なんて実は簡単なことなんじゃないか、と思えてしまう。もちろん、実際はそんなことはないんだけど(多方面の関係者との折衝とか、経営上の問題とかそりゃ書けない苦労はいろいろとありましょう)、そんな風に思ってしまう。自分にもできる!とつい意気込んでしまう。それが本に関わるかどうかは関係なく、著者がこの本を出版した意図のひとつは、実はそんな若者が一人でも増えることだと思う。それは善意のことだろうか。そうではないと思う。そんな若者が一人でも増えれば、著者の仕事にまたひとつ新しい可能性が増えることになるからだ。この本を読んで、あのトークイベントで知った著者の印象は変わることなく、むしろ強化された。この著者は恐ろしく頭のいい人だ。

『Nudita'』

Giorgio Agamben Nudita' nottetempo 2009

買った。紀伊国屋の洋書コーナーにて。売っていれば買わずにはいられない。これまでアガンベンのイタリア語はみたことがなかったのだが―英語版のほうが充実している―なんかの一助になればいい。ところで本書は、図版が挿入されているのだが。。。以下次回。

Indice

Creazione e salvezza
Che cos'e' il contemporaneo?
K.
Dell'utilita' e degli inconvenienti del vivere fra spettri
Su cio' che possiamo non fare
Identita' senza persona
Nudita'
Il corpo glorioso
Una fame da bue
L'ultimo capitolo della storia del mondo
Elenco delle principali opere citate

『溺れるものと救われるもの』

溺れるものと救われるもの

溺れるものと救われるもの

買った。もしかしたら書棚のどこかにあるのかもしれない、いやいやあれは図書館から借りてきた本だから大丈夫だよ、図書館ってどっちの!、といろいろな想いが逡巡するのだが、もう今日はなにも買えないやと、あきらめつつ最後の棚をみていたらそこにこの本をみつけて、さらに手書きで記されていた値段をみて、迷うことなく一目散にレジに向ったときの興奮は、お久しぶりの経験だった。

序文
1虐待の記憶
2灰色の領域
3恥辱
4意志の疎通
5無益な暴力
アウシュヴィッツの知識人
ステレオタイプ
8ドイツ人からの手紙
結論

「溺れるものと救われるもの」というタイトルは、『アウシュヴィッツは終わらない(これが人間か)』でも章のタイトルに用いられている。

『集中講義!アメリカ現代思想 リベラリズムの冒険』

集中講義! アメリカ現代思想 リベラリズムの冒険 (NHKブックス)

集中講義! アメリカ現代思想 リベラリズムの冒険 (NHKブックス)

☆☆☆★★
読んだ。面白かった。アメリカのリベラリズムの変遷を、戦後のアメリカの社会的変化に従って説明しているため、とても面白く理解が容易であるばかりか中心的に論じられているロールズ「正義」概念が当時の社会的要請に即して形成されあるいは修正されていることを確認することが出来る。著者の本を読むと、ついつい現代思想がなんだかよく分かった気になってしまうのだが、著者自身がなんども指摘しているとおり、あくまでもラフスケッチなのだから、うまくまとめていることの隙間を原著を通じて見出していかなければいけないのだ。

こんなにあるのね!

今こそアーレントを読み直す (講談社現代新書)

今こそアーレントを読み直す (講談社現代新書)

〈学問〉の取扱説明書

〈学問〉の取扱説明書

日本とドイツ 二つの戦後思想 (光文社新書)

日本とドイツ 二つの戦後思想 (光文社新書)

〈宗教化〉する現代思想 (光文社新書)

〈宗教化〉する現代思想 (光文社新書)

完訳 カント政治哲学講義録

完訳 カント政治哲学講義録

集中講義! 日本の現代思想 ポストモダンとは何だったのか (NHKブックス)

集中講義! 日本の現代思想 ポストモダンとは何だったのか (NHKブックス)

『セザンヌ物語』

セザンヌ物語―吉田秀和コレクション (ちくま文庫)

セザンヌ物語―吉田秀和コレクション (ちくま文庫)

買った。不勉強にも著者のことを知らずに、それでもなおこの本は絶対面白いと手にとって(最近では久々に新刊で購入して)読んでみたところ、改めて自分の勘のよさにほれぼれする(笑)。今月のちくま文庫およびちくま学芸文庫は読みたい本が多すぎて困る。うちの近所には大きな書店は二種類あり、ひとつは文庫ごとに新刊を並べ、ひとつは分野ごとに分けている。分野ごとに置かれている書棚のほうがその本の分野内コンテクストを映し出すのだが、今回ばかりはちくま関連が一同に介している(簡易な)書棚のほうが、版元のレベルの高さを証明することになる(あるいは逆もまたしかりなのだが)。本著は1986年に中央公論社(当時)より二巻本で出版されたものを収録した。