『絵画の二十世紀 マチスからジャコメッティまで』

絵画の二十世紀 ~マチスからジャコメッティまで (NHKブックス)

絵画の二十世紀 ~マチスからジャコメッティまで (NHKブックス)

☆☆☆☆★

読んだ。タイトルは『絵画の二十世紀』だが二十世紀美術史の概説書ではないので要注意。むしろ、マチスピカソ、ルオー、ジャコメッティの作品を通じて、「ある」というのはどういうことか(存在論)、「みる」というのはどういうことか(視覚論)を哲学的に考える。「哲学的に」ではあるが、著者の思考によって鍛えぬかれた文章で書かれていてるため読みやすい。それぞれの作家が網羅的に書かれているわけではないので、個々の作家については副読本があったほうがいい。前述四人の作家ごとに章立てされているが、この四人は、多かれ少なかれ「近代絵画の父」セザンヌとの理論的対立を経てみずからの絵画理論を築き上げるに至った。そのため本書全体を通じてひとつのセザンヌ論としても読むことが出来る。ちなみにNHKブックス996番。