『本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる仕事』

本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本

本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本

☆☆☆☆★
読んだ。おもしろかった。実は一度著者のトークイベントに参加したことがある。そのときに語られていた企画が、どのような経緯でもって、そしてその後どのような変遷をたどったかを知る。本書はいわゆる両A面の体裁になっていて、片側が「本の未来をつくる仕事」として、著者のブック・コーディネーターとしてのこれまでの仕事を紹介している。もう一方は「仕事の未来をつくる仕事」として、著者の仕事観がこれまでの経験に即して率直に述べられている。そこで語られていることは、これまで成し遂げてきた(クリエイティブな)仕事に比べてとても素朴にみえる。なんだ、かっこいい仕事なんて実は簡単なことなんじゃないか、と思えてしまう。もちろん、実際はそんなことはないんだけど(多方面の関係者との折衝とか、経営上の問題とかそりゃ書けない苦労はいろいろとありましょう)、そんな風に思ってしまう。自分にもできる!とつい意気込んでしまう。それが本に関わるかどうかは関係なく、著者がこの本を出版した意図のひとつは、実はそんな若者が一人でも増えることだと思う。それは善意のことだろうか。そうではないと思う。そんな若者が一人でも増えれば、著者の仕事にまたひとつ新しい可能性が増えることになるからだ。この本を読んで、あのトークイベントで知った著者の印象は変わることなく、むしろ強化された。この著者は恐ろしく頭のいい人だ。