神田神保町とヘイ・オン・ワイ―古書と街づくりの比較社会学

神田神保町とヘイ・オン・ワイ―古書とまちづくりの比較社会学

神田神保町とヘイ・オン・ワイ―古書とまちづくりの比較社会学

☆☆★★★*1

発売当初から注目していた本。ヘイオンワイの歴史的形成を扱う論文、同業者集団としての神保町の歴史的特徴を若手店主へのインタビューから考察した論文、不忍ブックストリートなどの古本を題材としたイベントを考察した論文を収録した論文集。特に期待をしていたのは、ヘイオンワイを扱っていた論文だが正直がっかりした。関係者のインタビューはおもしろいものの、論文の構成が弱く全体として説得力を欠いていたと思う。それに加えてヘイオンワイへの旅のエッセイも収録していたので、似たような内容を何度も読むことになってしまった。また、本書の三分の一は神保町の若手店主のインタビュー(を再編集したもの)を収録しているが、回答を匿名にしたうえで、内容ごとに切り貼りしてしまった意味がわからなかった。いくつかの古本屋は専門分野をもっているから、その専門を挙げるだけでどこの古本屋なのか特定できてしまうし、これは印象に過ぎないが、匿名にするほどの内部事情であったり、批判的な内容は含まれていなかったように思う。神保町についてのガイドブックは多く、店主の名前が挙がっているものも少なくない。研究の作法としてインタビュー対象者の名前を伏せたのかもしれないが*2。、この場合は、その必要性はなかったのではないか。結果として古本街としての神保町の多様性が消えてしまったように思われるそれでもヘイオンワイそのものについては面白かったので星二つ。

*1:今日から星を付けてみました。五星満点で白抜きが評価点。

*2:だいたい、それならなぜヘイオンワイ関係者はすべて名前が挙がっているのだ。